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What is "Eurhythmics"?

「リトミック教育とは」 

リトミック研究センター、ディプロマB指導資格取得時に、書いた論文をご紹介します。

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私がリトミックに出会ったのは、長女を出産してまもなくのことでした。

 

子供の保育園探しをしていた友人が、「リトミックがある保育園がいい」と言っているのを聞き、それまで、「リトミック」という言葉を聞いたことのなかった私は、「リトミックって何?」と問いかけたのがきっかけです。「リトミックとは?」の質問に対し、その時友人は、「知育も含めた音楽遊び」、のような答え方をしていたと思います。

 

 

 その後、長女の教育と、自分自身の指導経験の中でリトミック教育のすばらしさを知り、学びを深める中で、今の私なら、同じ問いに対してこう答えるかもしれません。

 

 

リトミック教育とは、リズム、音楽を通じて、自分自身を含む、この世の中を好きになり、楽しみ生き抜く力を育てる教育である」と。

 

 

 

 リトミックは、しばしば幼児の音楽遊びのことである、と誤解されます。リトミックをきちんと学んだ人にとっては、リトミックは幼児の教育にとどまらず、学生、大人、シニア、すべての年代において、有益な教育であるということがわかります。

 

 

 リトミックが素晴らしいのは、脳と身体の様々な部分を使うというところだと思います。

例えば、音楽に合わせてステップをするということは、まず聴き(聴覚)、それを受け入れ理解して(大脳辺縁系)、どのようなリズムなのかを判断し(大脳新皮質)、さらにそのリズムをステップに変えていく(運動感覚)という、何段階ものステップがあります。

 

 

 リトミックを教える教師は、各アクティビティにおいて、どんな狙いがあって、どんな効果があるのか、意識すべきだと思いますが、それを習っている生徒は、集中し、夢中になり、楽しい!と生きている実感を持ちながらアクティビティをするのみで、いつの間にか、複合的に脳と身体を活性化させている、というのが、リトミックの魅力だと思います。

 

 

 つまり、机に向かって問題を解く「お勉強」と違って、夢中で遊ぶ、という感覚で、脳、身体、精神性を同時に高めることができる、ということだと思います。

 

 

 例えば、リトミック研究センター「こどものためのリトミック Step1*i」のカリキュラムの「ねらい」には、各活動を通して、「予測し、イメージする力を育む」「自己主張、自己表現ができるようになる」「お母さんとの愛着形成」「共感性を育む」「気持ちを安定させる」「社会性を育む」「身体を動かす楽しさを感じる」「表現活動を楽しむ」「周囲の物事に関心を持つ」「意欲を高める」などと書かれています。これらはすべて、生きるための力になるものだと思います。

 

 

 また、実際にリトミックの教室では、子供たちは動物になりきったり、精一杯動いたり、お友達と力を合わせて何かを達成したり、夢中で楽しんだ結果、さらにエネルギーが湧く、という体験をしている様子が見られます。

 

 

 安定した気持ちで心からその場を楽しみ、共感性、社会性を育み、自己主張もできるようになる、という教育は、まさに「自分自身を含む、この世の中を好きになり、楽しみ生き抜く力を育てる教育である」と言えると思います。

 

 

 

 これだけの魅力のあるリトミックですが、私が子供を持つまで「リトミック」という言葉すら知らなかったように、多くの人たちはその存在すら知らず、リトミック教室に子供を通わせている親ですら、うまく説明できない理由は、その即効性のなさ、効果の見えづらさ、にあると思います。

 

 

 現代の日本の幼稚園では、「お遊戯」が取り入れられています。園児の親たちは、一生懸命に振り付けを覚えて踊る、我が子のかわいらしい姿を見て、とても喜びます。

しかし、そこには子供たちによる自由な表現や想像、想像的な表現は取り込まれていないことがほとんどです。

 

 

 リトミックがお遊戯と違うのは、「自由な表現」「自発性」を重視しているところです。

リトミックの目的は体育的というより、あくまで音楽的なところにあり、「リズムを聞き音楽を聞き、どう感じてどう表現したいか」*ii が重要です。

 

 

 その過程を大切にしているのですが、結果として見える動きだけでは、その価値は伝わりにくいかもしれません。

 

 

 1933年にダルクローズ本人より学んだジョン・コールマンは、「『リトミックそれ自身は芸術ではないが、全ての芸術のための準備である』また、『その場だけの上半身の身振りや、単に手を叩いたり、ドラムを叩くということだけでは、音楽の流れを真に経験することはできない』」*iii と語っています。 

 

 

 例えば、ピアノで速いフレーズを弾く、音楽に合った動きでダンスをする、ドラムを上手に叩ける、ということは誰が見てもわかる「結果」です。

 しかしダルクローズは、音楽のフレーズにおける「『エネルギーの波』を身体の動きによって理解すること」*ivや、即興演奏、つまり、自分自身の判断で音楽を創る、という経験を重視しています。

 

 

 

「エネルギーの波」を身体の動きによって理解しているかどうかは、他人が見てわかることではなく、また、即興演奏をすることの価値は、他人にはわかりづらいことだと思います。

 即興演奏をしているか否かよりも、高度な曲を演奏しているかどうか、ということの方が、他人にとって重要なことに感じるものだと思います。

 

 ここが、リトミックが理解されにくく、広まりにくい原因なのではないか、と思います。

 

 

 

 わかりやすいもの、即効性のあるものは、大勢に受け入れられ、広まりやすい性質があるのに対して、わかりづらく、効果が見えにくいものは、どうしても一部の理解ある人たちの間だけでとどまる傾向があると思います。

 

 

 

 このわかりづらさを、どうわかりやすくし、しかも質の高さを保持しながら広めていくかが、リトミックを研究し、実践している私たち教師の課題なのではないか、と思います。

 ジャック=ダルクローズは、音楽学校の学生の多くが、「音楽を知的に理解しているのみで、感覚を通して感動を起こすという、音楽の真の姿を理解できていない」*v、ということに気がつき、それを解決するために思いつき、発展させたのがリトミック、と言われています。

 

 

 子供から大人まで音楽を指導してきた私自身の経験からも、人生の早い時期からリトミックを経験することは、多くのメリットがあると感じています。

 リトミックを経験し、続けている子供は、将来音楽を演奏するための土台が作られることはもちろん、自分の身体と心がつながる、人の話に耳を傾ける姿勢ができる、集中力がつく、人の気持ちを思いやる、情緒がわかる、困難に立ち向かう自信がつく、などの効果から、「楽しみ生き抜く力」が養われるのではないか、と思います。

 そして、「楽しみ生き抜く力」を幼い頃から養った人たちが増えれば、世の中の問題の多くが解決され、多くの人にとって、より生きやすい世の中になるのではないかと思います。

 

 

 今後、より多くの幼稚園、保育園で、真のリトミック教育が導入されること、そして、スイスの小学校でリトミックが導入されているように、日本の小学校でもリトミックが当然のように導入される日が来ることを願います。

​竹内智子

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​参考文献:

 

i「こどものためのリトミック ~年間カリキュラムとその実践~ Step1」

リトミック研究センター 本部研究室 編著

リトミック研究センター

 

 

ii「リトミックってなあに」

岩崎光弘 著

ドレミ楽譜出版社 

第1章 P.25

 

 

iii「ダルクローズのリトミック」

エリザベス・バンドゥレスパー 著

石丸由理 訳

ドレミ楽譜出版社

P.118

 

 

iv「ダルクローズのリトミック」

エリザベス・バンドゥレスパー 著

石丸由理 訳

ドレミ楽譜出版社

P.102

 

 

v「ダルクローズのリトミック」

エリザベス・バンドゥレスパー 著

石丸由理 訳

ドレミ楽譜出版社

P.116

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